双子の兄の身代わりになった妹の人生【短編】
船が到着し、桟橋を降りると、黒塗りの立派な馬車が2台止まっている。
1台は迎えの馬車のようだ。御者席にヤシの姿が見えた。
「お待ちしておりました、お坊ちゃま。エミリー様」
二人で馬車に近づくと、ロッテンが優雅にお辞儀をした。
「出迎えご苦労、ロッテン」
エミリオが言葉を返すと、すぐにロッテンが涙ぐむ。
……ロッテンもきっと兄を思い出したのだろう。
「ああ、噂は本当だったんだ。まさか、はるか遠くルビー王国まで公爵令息である君が来るとは」
唐突に、もう一つの黒塗りの馬車の扉が開き、中から一人の男性が出てきた。
「やぁ、久しぶりだね。レイシ」
な、何で、どうしてこんな遠くにまでわざわざ来て……彼が?
■
バクバクと心臓が早鐘のように波打つ。
「殿下、お久しぶりでございます。何故、殿下がこちらに?」
エミリオも驚いているはずなのに、レイスとしての対応に徹する。
「ああ、実はあれから諸外国を回っていてね。半年ほど前から、ルビー王国に滞在しているんだ」
そうか。確かに第二王子は色々な国を見て回っているという話だった。
詳細は伝わってこなかったから、どの国にいつからいつまでいると言うことまでは知らなかった。
ただ、新しい婚約者を見つけるために諸外国を回っているのだろうと噂されていた。
「そうでしたか」
「ああ。早いものだ。あれから、3年か……」
婚約者を亡くし、悲しみを癒すために諸外国を回っているのだという噂も流れていた。
第二王子は、レイシアの婚約者だった。
そう、私の、元婚約者だ。2つ年上のアンドリュー様。
エミリオの背後に隠れるようにして立っていた私に殿下が気が付いた。
「レイス、しかし話を聞いて驚いたよ。ルビー王国に来るということもだが、女性を連れてくるって話じゃないか」
さっきから、膝がガクガク震えている。
1台は迎えの馬車のようだ。御者席にヤシの姿が見えた。
「お待ちしておりました、お坊ちゃま。エミリー様」
二人で馬車に近づくと、ロッテンが優雅にお辞儀をした。
「出迎えご苦労、ロッテン」
エミリオが言葉を返すと、すぐにロッテンが涙ぐむ。
……ロッテンもきっと兄を思い出したのだろう。
「ああ、噂は本当だったんだ。まさか、はるか遠くルビー王国まで公爵令息である君が来るとは」
唐突に、もう一つの黒塗りの馬車の扉が開き、中から一人の男性が出てきた。
「やぁ、久しぶりだね。レイシ」
な、何で、どうしてこんな遠くにまでわざわざ来て……彼が?
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バクバクと心臓が早鐘のように波打つ。
「殿下、お久しぶりでございます。何故、殿下がこちらに?」
エミリオも驚いているはずなのに、レイスとしての対応に徹する。
「ああ、実はあれから諸外国を回っていてね。半年ほど前から、ルビー王国に滞在しているんだ」
そうか。確かに第二王子は色々な国を見て回っているという話だった。
詳細は伝わってこなかったから、どの国にいつからいつまでいると言うことまでは知らなかった。
ただ、新しい婚約者を見つけるために諸外国を回っているのだろうと噂されていた。
「そうでしたか」
「ああ。早いものだ。あれから、3年か……」
婚約者を亡くし、悲しみを癒すために諸外国を回っているのだという噂も流れていた。
第二王子は、レイシアの婚約者だった。
そう、私の、元婚約者だ。2つ年上のアンドリュー様。
エミリオの背後に隠れるようにして立っていた私に殿下が気が付いた。
「レイス、しかし話を聞いて驚いたよ。ルビー王国に来るということもだが、女性を連れてくるって話じゃないか」
さっきから、膝がガクガク震えている。