双子の兄の身代わりになった妹の人生【短編】
バレるわけにいかない。自然にふるまわなければ。
お兄様に話かけるように、自然に……。
「レイス様、この方はどなたですか?」
ひょこっと、エミリオの影から顔を出して、腕を絡めながらアンドリュー様の顔を見上げる。
「え?どういうことだ?アリーシャ嬢ではないのか?」
当然、アンドリュー様もレイスの婚約者がアリーシャだったことを知っている。女性を連れてくると聞いて想像したのはアリーシャだったのだろう。
「ああ。アリーシャとの婚約は解消したんです。その、それで……」
エミリオの言葉に、アンドリュー様が笑い声をあげた。
「あははは、そうか。レイス、お前も人間だったんだなぁ。真面目だと思っていたのに、婚約者がいるのに別の女性に。くくく、それで、社交界に顔を出しずらくなって、しばらくこっちに雲隠れしに来たのか!」
ルビー王国に来た理由を適当に想像して、アンドリュー様が納得した。
「殿下には、アリーシャとなぜ別れたと問い詰められるかと思っていましたよ」
いつでも影武者として行動できるようにと、兄のことをよく知っていたエミリオは、兄と殿下の関係も周知している。きっと、兄ならばこう言ったであろうという言葉を、すらすらと口にしていく。
■
「殿下?ねぇ、レイス様、殿下って、この方はどなたなのですか?アリーシャ様のこともご存知のようですけど」
私も、立ち止まっていられない。エミリーとしてちゃんと行動しなければ。
「レイシア……」
アンドリュー様の口から、私の名前がつぶやかれる。
何度も名前を呼ばれたあの頃より、少しだけ低くなったアンドリュー様の声。
3年たつのだ。16歳だったアンドリュー様は、今は19歳。3年たってすっかり大人びている。
「似ている……」
アンドリュー様の言葉にはっと息をのむ。
やばい。バレるわけにはいかないのだ。
お兄様に話かけるように、自然に……。
「レイス様、この方はどなたですか?」
ひょこっと、エミリオの影から顔を出して、腕を絡めながらアンドリュー様の顔を見上げる。
「え?どういうことだ?アリーシャ嬢ではないのか?」
当然、アンドリュー様もレイスの婚約者がアリーシャだったことを知っている。女性を連れてくると聞いて想像したのはアリーシャだったのだろう。
「ああ。アリーシャとの婚約は解消したんです。その、それで……」
エミリオの言葉に、アンドリュー様が笑い声をあげた。
「あははは、そうか。レイス、お前も人間だったんだなぁ。真面目だと思っていたのに、婚約者がいるのに別の女性に。くくく、それで、社交界に顔を出しずらくなって、しばらくこっちに雲隠れしに来たのか!」
ルビー王国に来た理由を適当に想像して、アンドリュー様が納得した。
「殿下には、アリーシャとなぜ別れたと問い詰められるかと思っていましたよ」
いつでも影武者として行動できるようにと、兄のことをよく知っていたエミリオは、兄と殿下の関係も周知している。きっと、兄ならばこう言ったであろうという言葉を、すらすらと口にしていく。
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「殿下?ねぇ、レイス様、殿下って、この方はどなたなのですか?アリーシャ様のこともご存知のようですけど」
私も、立ち止まっていられない。エミリーとしてちゃんと行動しなければ。
「レイシア……」
アンドリュー様の口から、私の名前がつぶやかれる。
何度も名前を呼ばれたあの頃より、少しだけ低くなったアンドリュー様の声。
3年たつのだ。16歳だったアンドリュー様は、今は19歳。3年たってすっかり大人びている。
「似ている……」
アンドリュー様の言葉にはっと息をのむ。
やばい。バレるわけにはいかないのだ。