双子の兄の身代わりになった妹の人生【短編】
「もう!そんな顔しないで!よく考えてよエミリオ、身元がしっかりしていて、後々世継ぎ問題に発展しない相手あら誰だっていいのよ?誰だってよ?政略結婚じゃデブ禿じじぃがあてがわれることだってあるのに、私は自分で相手を選べるのよ?むしろ、ラッキーなの!」
 努めて明るく言う。
 不安がないわけじゃない。
 異国で子供を産むのだ、まったく不安を感じない方がおかしいと思う。
「そうだ、いっそエミリオの子供を産もうかしら?だったら、わざわざ遠くの国に行って相手を見つける必要もないんじゃない?」
 国内のどこかで隠れてしばらく暮らせばいい。
「な、な、な、何を言っているんですかレイシア様っ!私は影の人間ですよ?影の人間の子供が表に出ることは許されません」
 真っ赤になってうろたえるエミリオを見ながら、小さくため息をつく。
「知ってるわよ。言ってみただけ……」
 本当、貴族ってめんどくさい。
 どうせ父親が誰かなんて秘密にしておくのに、ちゃんとした血筋の相手じゃないと駄目とか。
 でもさぁ、結婚もしてない女性と関係を持つような相手、血筋はしっかりしてても男として最低じゃん?とても好きになれそうにないだろうなぁって。

 サファイラ公爵家。それが私の家。
 大陸の最南端。海に面した横に細長いサファイア王国の王都周辺を領土に持つ貴族だ。
 サファイア王国のサファイラ公爵。名前が似ていることからも分かるように、王家とかなり近い血を持った一族だ。王家に何かあったときにはまずサファイラ公爵家がその座を守っていくという役割を課せられている。
 サファイラ王国と国境を接している国は北側に2つだけだ。交流があるのもその2国となる。
 そのさらにその2つの国の北に3つの国があり、大陸の最北端にはサファイア王国と同じように横長で北の海に面したルビー王国がある。
< 3 / 13 >

この作品をシェア

pagetop