双子の兄の身代わりになった妹の人生【短編】
エミリオがいなくなってしまったら「レイシア」もこの世から消えてしまう。
「ふふ、ありがとう。でも、レイシアは貴方の前だけにいる幻みたいなものだから。ねぇ、エミリオ。私をエミリーにしてちょうだい」
エミリオが、留学中はレイスとして過ごすように、私は留学中はエミリーとして過ごす。
だから、エミリーが好みそうなドレスを新調した。エミリオが使っていたピンクブロンドのかつらはサイズを調整して私が使う。
あとは、エミリーらしいメイクを施してもらうだけだ。
鏡の前で目を閉じ、エミリオの手が顔に触れるのを感じる。
目を開ければ、鏡の中にレイス様の心を奪ったエミリーの姿があった。
■
ガタンと大きく揺れ、ふらついた私をエミリオが支えてくれた。
今、私たちはルビー王国に向かっている船の中である。公爵家貸し切りの船。その中で移動中に入れ替わりを行ったのだ。
「大丈夫ですか、レイシア様」
エミリオの胸の中にいる。ことに一瞬どきりとした。
そうだ。この3年……お兄様のふりをしていた3年間とは違う。私は、女として生活をするのだ。男性が女性をとっさに庇うなんて、普通のこと。いちいち大げさに驚いていてはいけない。
ぐっと奥歯を噛みしめ、3つ心の中で数える。
「ありがとうございます。レイス様。エミリーのこと庇ってくださって」
ニコニコと無邪気な笑顔を浮かべてエミリオを見る。
私はこれから、無邪気で人懐っこい女性、エミリーになるのだ。
そして、男性と仲良くなり、子をもうける。あとくされの無い関係を、それなりの血を持った人と持つ。
「いや、エミリーに怪我がなくてよかったよ。一体どうしたのか、確認してこよう」
すぐさまエミリオがレイスの演技に入った。
「お兄様……」
「ふふ、ありがとう。でも、レイシアは貴方の前だけにいる幻みたいなものだから。ねぇ、エミリオ。私をエミリーにしてちょうだい」
エミリオが、留学中はレイスとして過ごすように、私は留学中はエミリーとして過ごす。
だから、エミリーが好みそうなドレスを新調した。エミリオが使っていたピンクブロンドのかつらはサイズを調整して私が使う。
あとは、エミリーらしいメイクを施してもらうだけだ。
鏡の前で目を閉じ、エミリオの手が顔に触れるのを感じる。
目を開ければ、鏡の中にレイス様の心を奪ったエミリーの姿があった。
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ガタンと大きく揺れ、ふらついた私をエミリオが支えてくれた。
今、私たちはルビー王国に向かっている船の中である。公爵家貸し切りの船。その中で移動中に入れ替わりを行ったのだ。
「大丈夫ですか、レイシア様」
エミリオの胸の中にいる。ことに一瞬どきりとした。
そうだ。この3年……お兄様のふりをしていた3年間とは違う。私は、女として生活をするのだ。男性が女性をとっさに庇うなんて、普通のこと。いちいち大げさに驚いていてはいけない。
ぐっと奥歯を噛みしめ、3つ心の中で数える。
「ありがとうございます。レイス様。エミリーのこと庇ってくださって」
ニコニコと無邪気な笑顔を浮かべてエミリオを見る。
私はこれから、無邪気で人懐っこい女性、エミリーになるのだ。
そして、男性と仲良くなり、子をもうける。あとくされの無い関係を、それなりの血を持った人と持つ。
「いや、エミリーに怪我がなくてよかったよ。一体どうしたのか、確認してこよう」
すぐさまエミリオがレイスの演技に入った。
「お兄様……」