魔法の恋の行方・魔女の媚薬(シリーズ3 グリセラとリーディアン)
<狩猟の館・数日後・2階廊下・15時>

あの一件以来、
リードは注意深くグリセラの行動を、観察するようにした。

皿を割って料理人に叱られたり、
パンを焦がしたり、
結構怒られることが多い。

リードが2階の窓を閉めようとした時に、
下の庭の木の陰に、グリセラが立っていた。
眼鏡をはずして、手で顔を覆っている。
・・泣いているのか?

かわいそうに、
あの年頃の女の子なら、きれいなドレスを着て、髪も結い上げて・・

笑えばきっとかわいいのに。
グリセラはいつもうつむいている。
喪服のような黒い服と黒い髪・・
それにあの眼鏡だ。

「何を見ているんだ?」
リードが振り向くと、クリスが立っていた。
「いや・・グリセラが、下に・・」
再度見ると、もういなかった。

クリスが小声で言った。
「もしかすると、彼女は魔女の国の血が入っているのではないか?」

リードはさらに声を潜めた。
「魔女なのか・・・?」

クリスは否定した。
「魔女に黒髪はいないよ。
確か、金か銀だ。イーディス先生のようにね」
リードはうなずいた。
黒髪はグスタフ皇国だ。

「それに魔女なら、使用人にはならない」
クリスが言った。

確かにそうだ。リードは窓を閉めた。
魔女は、数学の問題を解くことはないだろう。

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