魔法の恋の行方・魔女の媚薬(シリーズ3 グリセラとリーディアン)

狩猟の館(図書室)10-14ページ

<狩猟の館・図書室・10時>

チャンスが来た。
どうやらグリセラの掃除場所は
決まっているようだ。
リードはわざとその部屋を、補習で使うことにした。

コンコン
ノックの小さい音がして、扉の隙間が空いた。

「リード様・・掃除なのですが・・」
リードはグリセラの顔を見て、
ほほ笑んだ。

「掃除はいいんだ。君には別のやってもらいたい事がある」
グリセラは、戸惑っているようだ。

リードは用紙と数冊の本を持ち、
廊下に出た。
「図書室がいいな。行こう」
「え・・?はい・・」

リードは速足で廊下を歩く。
グリセラも慌てた様子で後をついて来た。

リードは図書室の鍵を開けた。
「グリセラ、そこに座って」
リードは中央にある閲覧用の大きな長机に座るよう指示した。

グリセラが座ると、リードも隣に座った。

「君は、数学が好きなのかな?」
グリセラを見ると、緊張してうつむいている。

「数学って・・何ですか?・・」
リードは息を呑んだ。
なぜ、できるのか?
なぜ、解いてしまうのか?

落ち着いて、もっとよく観察をしなくてはならない。

リードは何枚かの紙とペンを
グリセラの前に置いた。
「まずはこの問題を、やってみてごらん」
リードの視線は、グリセラと用紙と交互に移る。

グリセラは目の前の課題用紙を、
しばらく見つめていた。

小さくうなずくと、ペンと取って書き始めた。
リードの目前で、グリセラはどんどん問題の解答を書き始めていく。

相当難しい問題のはずなのに・・
迷いがない。
グリセラがペンを置いた。

そしてリードの顔を、ちらっと気にするように見た。

「うん・・」
リードは深く息を吐いた。
グリセラは問題を解いていた。

それに解き方が美しい。
無駄がない。完璧だった。

なぜできるのだろうか?
何を聞けばよいのだろうか?
< 11 / 35 >

この作品をシェア

pagetop