魔法の恋の行方・魔女の媚薬(シリーズ3 グリセラとリーディアン)
<狩猟の館・図書室・15時>
リードは3時少し前に
授業を切り上げ、生徒たちに食堂へ行くように言った。
生徒たちは、苦手な数学に開放されたので、
歓声をあげて、部屋から出て行った。
リードは歴史の本を数冊持って、
部屋を出ると鍵をかけた。
クリスには、
<お茶の時間には、図書室で
本を読む>
と言ってあるから、大丈夫だろう。
図書室は狩猟の館の一番奥にある、静かな場所だ。
図書室の前の、ベランダのカーテンの裾部分が膨らんでいる。
リードは思わず笑ってしまった。
グリセラは
隠れているつもりなのだろう。
「グリセラ、誰もいないから大丈夫だよ」
グリセラは周囲を見回し、カーテンの裾から出て来た。
「君の希望の通り、歴史をやろう」
この時、グリセラはうつむかず、
リードを見て言った。
「あの、<グスタフ皇国の皇帝が
魔女の国の女王と結婚した>というお話が、本当にあるのですか?」
珍しく先に質問してきた。
リードは記憶を手繰るように、
図書室の書架から一冊の本を抜き取った。
「たぶん、薬草リキュールが
この国に入った時の話かな。
古い伝説だから、真偽のほどはわからないが」
リードはグリセラの隣に座って、
本の目次を調べた。
「簡単にしか書いていないけれど・・」
「オルロフ皇帝は旅先で、偶然魔女に出会った。
そこで魔女から誘われて、薬草リキュールの飲み比べをしたらしい。
だけど魔女のほうが強くて、皇帝は酔いつぶれてしまったんだ」
「ふふ、魔女はとてもお酒に強かったんですね?」
グリセラが口に手を当てて笑った。
ああ・・この子も笑う事ができるのだ。
リードは心を動かされた。
「そうだね。魔女は消えたけど、
皇帝は薬草リキュールの虜になった。
どうしても手に入れたくて、
毎月密売日に通ったらしい。
老婆から買ったと書いてある。
その老婆こそ、あの飲み比べをした魔女が変身した姿だった」
「昔の魔女は、老婆になったのですね」
グリセラは感心したように言った。
「本当の魔女はとても美しく、
金の髪と紫の瞳の人だったらしい」
リードは、イ―ディス先生を思い出した。
あの人が女性なら、まさしく魔女だろう。
「オルロフ皇帝は息子に皇帝の座を譲ると、
自分は魔女の国に行ったと書いてある。
だから、結婚というよりも、
皇帝の地位を捨てても、
魔女と一緒に暮らすことを選んだのだろうね」
<ほうっ>とグリセラがため息をついた。
「あの・・あの、今のお話を書き写してもいいですか?」
女の子は恋の話が好きだ。リードは苦笑した。
「いいよ。まだ・・時間があるから」
「ありがとうございます!」
グリセラも数学より、恋の話の方が好きそうだ。
頬が赤い。
<かわいいな>と思いながら、
リードはペンと紙を渡した。
すぐにグリセラは書き出した。
ペンを持つグリセラの指は、
ほっそりして美しい。
あれだけ働いていいるのに、
手は貴族の娘のようにきれいだ。
それに、書いてある文字は優雅で美しい。
きちんと教育を受けていることが
わかる。
リードは3時少し前に
授業を切り上げ、生徒たちに食堂へ行くように言った。
生徒たちは、苦手な数学に開放されたので、
歓声をあげて、部屋から出て行った。
リードは歴史の本を数冊持って、
部屋を出ると鍵をかけた。
クリスには、
<お茶の時間には、図書室で
本を読む>
と言ってあるから、大丈夫だろう。
図書室は狩猟の館の一番奥にある、静かな場所だ。
図書室の前の、ベランダのカーテンの裾部分が膨らんでいる。
リードは思わず笑ってしまった。
グリセラは
隠れているつもりなのだろう。
「グリセラ、誰もいないから大丈夫だよ」
グリセラは周囲を見回し、カーテンの裾から出て来た。
「君の希望の通り、歴史をやろう」
この時、グリセラはうつむかず、
リードを見て言った。
「あの、<グスタフ皇国の皇帝が
魔女の国の女王と結婚した>というお話が、本当にあるのですか?」
珍しく先に質問してきた。
リードは記憶を手繰るように、
図書室の書架から一冊の本を抜き取った。
「たぶん、薬草リキュールが
この国に入った時の話かな。
古い伝説だから、真偽のほどはわからないが」
リードはグリセラの隣に座って、
本の目次を調べた。
「簡単にしか書いていないけれど・・」
「オルロフ皇帝は旅先で、偶然魔女に出会った。
そこで魔女から誘われて、薬草リキュールの飲み比べをしたらしい。
だけど魔女のほうが強くて、皇帝は酔いつぶれてしまったんだ」
「ふふ、魔女はとてもお酒に強かったんですね?」
グリセラが口に手を当てて笑った。
ああ・・この子も笑う事ができるのだ。
リードは心を動かされた。
「そうだね。魔女は消えたけど、
皇帝は薬草リキュールの虜になった。
どうしても手に入れたくて、
毎月密売日に通ったらしい。
老婆から買ったと書いてある。
その老婆こそ、あの飲み比べをした魔女が変身した姿だった」
「昔の魔女は、老婆になったのですね」
グリセラは感心したように言った。
「本当の魔女はとても美しく、
金の髪と紫の瞳の人だったらしい」
リードは、イ―ディス先生を思い出した。
あの人が女性なら、まさしく魔女だろう。
「オルロフ皇帝は息子に皇帝の座を譲ると、
自分は魔女の国に行ったと書いてある。
だから、結婚というよりも、
皇帝の地位を捨てても、
魔女と一緒に暮らすことを選んだのだろうね」
<ほうっ>とグリセラがため息をついた。
「あの・・あの、今のお話を書き写してもいいですか?」
女の子は恋の話が好きだ。リードは苦笑した。
「いいよ。まだ・・時間があるから」
「ありがとうございます!」
グリセラも数学より、恋の話の方が好きそうだ。
頬が赤い。
<かわいいな>と思いながら、
リードはペンと紙を渡した。
すぐにグリセラは書き出した。
ペンを持つグリセラの指は、
ほっそりして美しい。
あれだけ働いていいるのに、
手は貴族の娘のようにきれいだ。
それに、書いてある文字は優雅で美しい。
きちんと教育を受けていることが
わかる。