ナチュラルチェリー
第1話 モテ期
「不幸だったなぁ、片岡……、入学したばっかで入院なんてなぁ……」
「そうですね、あははっ……」
僕は、入学してわずか一週間後に入院した。
原因不明の高熱により、消化器の持病が悪化して倒れたのだ。
今は、僕の副担任で部活の顧問のである柳先生がお見舞いに来てくれている。
「クラスでも部活でも、みんな待ってるぞ。退院しても、しばらくは動けねぇと思うし、勉強も追いつかなきゃだからな。お前のペースでいいから頑張ろな。」
「はい、頑張ります……ははっ……」
「そろそろ行くわ。じゃ、学校でな。」
「あっ、はい。ありがとうございます。」
柳先生が病室を出て行くと、僕は深くため息をついた。
はぁ……学校かぁ、不安だ……
グループとかできてんだろうなぁ……
--------------------
退院後初めて学校に行けたのは、GW明けだった。
病院で一通り検査を受け、午後からの出席となった。
「片岡くん、大変だったね。とりあえず一安心か。」
僕は、登校したら担任の元へ来るよう言われていたので、職員室に来ている。
身を案じてくれたのは、担任の宮沢先生だ。
「でも、片岡くんは一ヶ月も学校に来れなかったわけだから、これからしばらくは頑張んないとね。先生も手伝うから、困ったらなんでも言ってね。」
話を聞き終わり、僕は職員室から退室して教室へ向かう。
廊下には誰もいない。もう午後の授業が始まっているのだ。
うわぁ……入りにくぅ……てか、入りたくねぇ……
絶対みんな俺のこと見るよなぁ……
来夢は入室を躊躇って、約1分間葛藤した。
だが、入るしか選択肢がないことを自覚し、諦めて入室する覚悟を決めた。
そして、予想通りみんなの視線が来夢に集まり、少し教室がざわつく。
「おっ、片岡来夢くんかな。話は聞いてるよ。大変だったね。席の場所わかるかな?」
そう初対面の先生に言われ、教室を見渡すと、入学当初の名簿席ではなくなっていた。
僕は先生の方を向き首を横に振る。
「片岡くんの席どこだー。近くの奴教えてやってくれー。」
「来夢こっちだぞー。」
先生がそう言うと、同じ小学校の人が答えてくれた。
先生が授業を再開する。数学の授業だった。
やべっ、教科書持ってきてねぇ……
僕があたふたしていると、隣の席の子が話しかけてくれた。
「教科書忘れたの?見せてあげる。あっ、私、本橋蒼。よろしくねっ。」
「あっ、ありがとう。よろしく。」
「授業何言ってるか分かんないでしょ。今まで授業いなかったから仕方ないよね〜。」
「いや、割と分かるかも。小学校で軽くやったから。」
「えー。凄いね。私、学校来てたのに全く分かんないよー。あははっ。」
蒼はすごくフレンドリーに話しかけてくれた。
そのおかげかで、仲良くなるのに時間はかからなかった。
授業が終わると、小学校からの友達や、幼稚園が同じで、中学で再開した男子が集まってきた。
「うぇい、来夢〜。久しぶだなぁ〜。身体大丈夫かぁ〜。」
「久しぶだね、来夢くん。大丈夫なの?」
そんな感じの絡みを一通り受けた後、授業が始まった。
その授業でも蒼は、気軽に接してくれた。
授業が終わるとすぐにHRがあり、終わり次第、みんなは部活動に行く。
その途中で何人かの女子に話しかけられるが、先生に部活へ行くよう煽られる。
僕は、今までの分の補習があったので、部活動へは行けない。
先生から一時間ほど教わり、そのあとは部活動の終わる時間まで自習だ。
補習の内容から出された宿題をやる。普段の授業課題もあるから、正直きつい。
自習を始めてから30分ぐらい経った時、蒼が教室に来た。
蒼は僕に気づくと、笑顔で駆け寄り隣に座った。
「あれ、どうしたの蒼。部活は?」
「もう終わったんだー。来夢は補習?大変だね〜。」
蒼の所属する吹奏楽部は、合唱部と時間を分けて音楽室を使っているらしい。
今日は先に使う割り当てだったらしく、早めに終わったのだ。
「私が教えてあげよっか。」
「ほんと?助かるわ。あ、でも蒼授業聞いてても分かんないって……」
「これ英語じゃん?私英語は得意なんよ〜。」
「あ、まじ?僕英語できないから助かるわ〜。」
自然と蒼に対する口調が軽くなっていった。
それぐらい、彼女は友好的だったということだろう。
僕は、そんな蒼を凄いと思うと同時に、好意的に思えた。
しばらくして、僕も蒼も集中力が切れると、蒼が突然、恋バナをしてきた。
「来夢はさ、好きな子とかできた?」
「え、いや、さすがにできてないよ。まだみんなのことよく知らないし。」
「一目惚れとか、実は小学校から好きだったとか、ないの?」
「うん、ないかなぁ。外見で好きになること無いんだよね。」
「へぇ、なんか偉いねぇ。あの子可愛いなぁとかないの?」
「それはさすがにあるよ!興味がないわけじゃないからさ。ってか、どしたの急に。」
僕は、出会って初日の人と恋バナをすることに居心地の悪さを感じ、軽く話の方向をずらす為に質問した。
蒼は少し考え込むように、僕から目線を逸らす。そしてすぐに、僕の方に向き直す。
「来夢、女子からの人気凄いの。入学したての時から少し話題になってたんだよ。あの子かっこ可愛いって。
今日もさ、みんな来夢の話してたし、放課後に他のクラスから来夢のこと見に来てた人もいたんだよ?」
「……まじか。」
みなさん。なんと、人生初めてのモテ期がきたみたいです。
「不幸だったなぁ、片岡……、入学したばっかで入院なんてなぁ……」
「そうですね、あははっ……」
僕は、入学してわずか一週間後に入院した。
原因不明の高熱により、消化器の持病が悪化して倒れたのだ。
今は、僕の副担任で部活の顧問のである柳先生がお見舞いに来てくれている。
「クラスでも部活でも、みんな待ってるぞ。退院しても、しばらくは動けねぇと思うし、勉強も追いつかなきゃだからな。お前のペースでいいから頑張ろな。」
「はい、頑張ります……ははっ……」
「そろそろ行くわ。じゃ、学校でな。」
「あっ、はい。ありがとうございます。」
柳先生が病室を出て行くと、僕は深くため息をついた。
はぁ……学校かぁ、不安だ……
グループとかできてんだろうなぁ……
--------------------
退院後初めて学校に行けたのは、GW明けだった。
病院で一通り検査を受け、午後からの出席となった。
「片岡くん、大変だったね。とりあえず一安心か。」
僕は、登校したら担任の元へ来るよう言われていたので、職員室に来ている。
身を案じてくれたのは、担任の宮沢先生だ。
「でも、片岡くんは一ヶ月も学校に来れなかったわけだから、これからしばらくは頑張んないとね。先生も手伝うから、困ったらなんでも言ってね。」
話を聞き終わり、僕は職員室から退室して教室へ向かう。
廊下には誰もいない。もう午後の授業が始まっているのだ。
うわぁ……入りにくぅ……てか、入りたくねぇ……
絶対みんな俺のこと見るよなぁ……
来夢は入室を躊躇って、約1分間葛藤した。
だが、入るしか選択肢がないことを自覚し、諦めて入室する覚悟を決めた。
そして、予想通りみんなの視線が来夢に集まり、少し教室がざわつく。
「おっ、片岡来夢くんかな。話は聞いてるよ。大変だったね。席の場所わかるかな?」
そう初対面の先生に言われ、教室を見渡すと、入学当初の名簿席ではなくなっていた。
僕は先生の方を向き首を横に振る。
「片岡くんの席どこだー。近くの奴教えてやってくれー。」
「来夢こっちだぞー。」
先生がそう言うと、同じ小学校の人が答えてくれた。
先生が授業を再開する。数学の授業だった。
やべっ、教科書持ってきてねぇ……
僕があたふたしていると、隣の席の子が話しかけてくれた。
「教科書忘れたの?見せてあげる。あっ、私、本橋蒼。よろしくねっ。」
「あっ、ありがとう。よろしく。」
「授業何言ってるか分かんないでしょ。今まで授業いなかったから仕方ないよね〜。」
「いや、割と分かるかも。小学校で軽くやったから。」
「えー。凄いね。私、学校来てたのに全く分かんないよー。あははっ。」
蒼はすごくフレンドリーに話しかけてくれた。
そのおかげかで、仲良くなるのに時間はかからなかった。
授業が終わると、小学校からの友達や、幼稚園が同じで、中学で再開した男子が集まってきた。
「うぇい、来夢〜。久しぶだなぁ〜。身体大丈夫かぁ〜。」
「久しぶだね、来夢くん。大丈夫なの?」
そんな感じの絡みを一通り受けた後、授業が始まった。
その授業でも蒼は、気軽に接してくれた。
授業が終わるとすぐにHRがあり、終わり次第、みんなは部活動に行く。
その途中で何人かの女子に話しかけられるが、先生に部活へ行くよう煽られる。
僕は、今までの分の補習があったので、部活動へは行けない。
先生から一時間ほど教わり、そのあとは部活動の終わる時間まで自習だ。
補習の内容から出された宿題をやる。普段の授業課題もあるから、正直きつい。
自習を始めてから30分ぐらい経った時、蒼が教室に来た。
蒼は僕に気づくと、笑顔で駆け寄り隣に座った。
「あれ、どうしたの蒼。部活は?」
「もう終わったんだー。来夢は補習?大変だね〜。」
蒼の所属する吹奏楽部は、合唱部と時間を分けて音楽室を使っているらしい。
今日は先に使う割り当てだったらしく、早めに終わったのだ。
「私が教えてあげよっか。」
「ほんと?助かるわ。あ、でも蒼授業聞いてても分かんないって……」
「これ英語じゃん?私英語は得意なんよ〜。」
「あ、まじ?僕英語できないから助かるわ〜。」
自然と蒼に対する口調が軽くなっていった。
それぐらい、彼女は友好的だったということだろう。
僕は、そんな蒼を凄いと思うと同時に、好意的に思えた。
しばらくして、僕も蒼も集中力が切れると、蒼が突然、恋バナをしてきた。
「来夢はさ、好きな子とかできた?」
「え、いや、さすがにできてないよ。まだみんなのことよく知らないし。」
「一目惚れとか、実は小学校から好きだったとか、ないの?」
「うん、ないかなぁ。外見で好きになること無いんだよね。」
「へぇ、なんか偉いねぇ。あの子可愛いなぁとかないの?」
「それはさすがにあるよ!興味がないわけじゃないからさ。ってか、どしたの急に。」
僕は、出会って初日の人と恋バナをすることに居心地の悪さを感じ、軽く話の方向をずらす為に質問した。
蒼は少し考え込むように、僕から目線を逸らす。そしてすぐに、僕の方に向き直す。
「来夢、女子からの人気凄いの。入学したての時から少し話題になってたんだよ。あの子かっこ可愛いって。
今日もさ、みんな来夢の話してたし、放課後に他のクラスから来夢のこと見に来てた人もいたんだよ?」
「……まじか。」
みなさん。なんと、人生初めてのモテ期がきたみたいです。