初恋
「ねえ唯、アンタと中島絶対変。昨日までは中島が一方的に避けられてる
感じだったけど、今日はもうお互い意識して見ないようにしてるよね。
白状しろ、何があったの?」
「ミカ…」
お昼休み、いつもなら教室でお弁当を食べるのに今日は突然屋上に行こう
なんていうからおかしいとは思ったけど、ミカにも心配かけてるんだと
思ったら申し訳なくて、私は正直に話した。あの雨の日のこととそれを
境に中島を意識してしまっていること、そして昨日決定的に亀裂が生じて
しまったこと。お弁当を食べるのも忘れて心の中に溜まっていた想いを
吐き出した。全ていい終わってミカの顔を見上げたとき、ミカの表情が
さっきまでの心配そうな顔からなんだかお母さんみたいな優しい表情に
変わっていた。
「唯は中島のことが好きなんだね」
「え、違うよ、そういうのじゃなくて」
違わないよ、とミカは私の頬に両手をあてていった。
「じゃあどうして泣いてるの?」
そうミカにいわれて初めて自分の頬が涙で濡れていることに気がついた。
今までも好きだなーと思える男の子はいた。小学5年のときに隣りの席に
座ってたナオくんとか、去年同じクラスだった今井くん。だけど彼らを
想ってた気持ちとは明らかに違う。一緒にいて楽しければいい、それだけ
じゃ足りなくて、もっと中島のことが知りたいのに、それ以上に今の状態が
壊れることのほうが怖かった。
中島が私の肩を抱いて雨の中を走ってくれたときに生まれたあの気持ちは
恋だった?