あなたのためには泣きません
翌日は火曜日
昨日の夜、泣きに泣いた私は、腫れた目を隠す為に普段はかけない眼鏡をかけた。
私が失恋しても、いくら泣いても、朝は来る。
いつもの時間に家を出た私は、通勤電車を待つタイミングで、涼香ちゃんにメッセージを送った。
「涼香ちゃんの言う通りだった。山中さん結婚するんだって。
今は悲しくて苦しいけど、とりあえず仕事するね。
またゆっくりお話し聞いてね」
とだけ送ると、
「だから言ったでしょって、言いたいけど、言わないわよ。
辛いわね。今週は役員会で忙しいけど、必ず時間とるから」
とレスがきた。
涼香ちゃんは優しい。そして、正しい。
だから、言ったでしょ。って、言ってくれていいよ。
営業フロアにつく前に、軽く深呼吸をする。
今朝はまずやらないといけないことがある。大人として。後輩として。
息を整えて、部署へ向かうと、またまた女性が集まっていた。
また佐川さんが髪切ったのかな?
と思ってると、またもや優菜ちゃんが
「あ!那智さん!おはようございます!って、今日は眼鏡なんですね。あれ?目、腫れてません?」
「あ、ちょっとなんか、痛くて。今日はどうしたの?」
とそれ以上つっこまれないように私が一歩優菜ちゃんから距離をとると、
「あ!大ニュースですよ!佐川さん、彼女と別れたらしいんです!」
「え?」
なんでそんなことを優菜ちゃんが知っているのか!?本当に恐ろしい、総務部。
「な、なんで、優菜ちゃんがそんなこと知ってるの?」
「見てください、佐川さん、上、パーカーでしょ?」
と指さすほうを見ると、本当だ。スーツの上にスポーツブランドのスウェットパーカーを着ている。なぜ?
「なんかね、朝、駅前のカフェで彼女と別れ話してたそうなんですよ!そしたらね、激高した彼女が飲んでたアイスティ、バシャーってかけたんですって!佐川さんと同じ駅から乗ってくる私の同期が言ってたので、間違いありません!」
ひーーーー!!!そんなドラマみたいなこと本当にあるの!?
私はなんと言っていいかわからずに
「そ、そうなのか、、、、それは大変だったね。朝から」
「大変じゃありません!朗報です!佐川さんが久しぶりにフリーになったんですから!」
なんというポジティブシンキング。私も見習わなければ。
と、とりあえず、私は女性達の合間をすり抜けて、営業部へ入った。
入り口付近の女性陣が減ったころを見計らって資料を見ながら何か打ち合わせしている二人に近づく。
「あのっ 佐川さん、市井さん。滝沢です。昨日は、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。ありがとうございました」
と一息で言うと、頭を下げた。
「ああ、滝沢さん、もう大丈夫?」
と市井さんの優し気な声の横で、佐川さんは猛烈に機嫌の悪い顔をしている。
怖くて、とてもじゃないけど目を合わせられない。
「はい。おかげさまで、もう大丈夫です。お世話になりました」
と言って、くるっと回れ右をする。は、早くデスクに戻ろう!と思うと
「おい、滝沢」
ひぃ!佐川さんの低い声に、おそるおそる後ろを振り返ると
「眼鏡、だせぇな」
「尊、、、」
ひどいセリフの佐川さんを市井さんがたしなめる。
「それは、申し訳ありませんでした」
と、棒読みで投げ返すと、もう振り返らずデスクに戻った。
昨日の夜、泣きに泣いた私は、腫れた目を隠す為に普段はかけない眼鏡をかけた。
私が失恋しても、いくら泣いても、朝は来る。
いつもの時間に家を出た私は、通勤電車を待つタイミングで、涼香ちゃんにメッセージを送った。
「涼香ちゃんの言う通りだった。山中さん結婚するんだって。
今は悲しくて苦しいけど、とりあえず仕事するね。
またゆっくりお話し聞いてね」
とだけ送ると、
「だから言ったでしょって、言いたいけど、言わないわよ。
辛いわね。今週は役員会で忙しいけど、必ず時間とるから」
とレスがきた。
涼香ちゃんは優しい。そして、正しい。
だから、言ったでしょ。って、言ってくれていいよ。
営業フロアにつく前に、軽く深呼吸をする。
今朝はまずやらないといけないことがある。大人として。後輩として。
息を整えて、部署へ向かうと、またまた女性が集まっていた。
また佐川さんが髪切ったのかな?
と思ってると、またもや優菜ちゃんが
「あ!那智さん!おはようございます!って、今日は眼鏡なんですね。あれ?目、腫れてません?」
「あ、ちょっとなんか、痛くて。今日はどうしたの?」
とそれ以上つっこまれないように私が一歩優菜ちゃんから距離をとると、
「あ!大ニュースですよ!佐川さん、彼女と別れたらしいんです!」
「え?」
なんでそんなことを優菜ちゃんが知っているのか!?本当に恐ろしい、総務部。
「な、なんで、優菜ちゃんがそんなこと知ってるの?」
「見てください、佐川さん、上、パーカーでしょ?」
と指さすほうを見ると、本当だ。スーツの上にスポーツブランドのスウェットパーカーを着ている。なぜ?
「なんかね、朝、駅前のカフェで彼女と別れ話してたそうなんですよ!そしたらね、激高した彼女が飲んでたアイスティ、バシャーってかけたんですって!佐川さんと同じ駅から乗ってくる私の同期が言ってたので、間違いありません!」
ひーーーー!!!そんなドラマみたいなこと本当にあるの!?
私はなんと言っていいかわからずに
「そ、そうなのか、、、、それは大変だったね。朝から」
「大変じゃありません!朗報です!佐川さんが久しぶりにフリーになったんですから!」
なんというポジティブシンキング。私も見習わなければ。
と、とりあえず、私は女性達の合間をすり抜けて、営業部へ入った。
入り口付近の女性陣が減ったころを見計らって資料を見ながら何か打ち合わせしている二人に近づく。
「あのっ 佐川さん、市井さん。滝沢です。昨日は、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。ありがとうございました」
と一息で言うと、頭を下げた。
「ああ、滝沢さん、もう大丈夫?」
と市井さんの優し気な声の横で、佐川さんは猛烈に機嫌の悪い顔をしている。
怖くて、とてもじゃないけど目を合わせられない。
「はい。おかげさまで、もう大丈夫です。お世話になりました」
と言って、くるっと回れ右をする。は、早くデスクに戻ろう!と思うと
「おい、滝沢」
ひぃ!佐川さんの低い声に、おそるおそる後ろを振り返ると
「眼鏡、だせぇな」
「尊、、、」
ひどいセリフの佐川さんを市井さんがたしなめる。
「それは、申し訳ありませんでした」
と、棒読みで投げ返すと、もう振り返らずデスクに戻った。