浮気 × 浮気
と、そんな時。
不意に腕を掴まれたかと思えば、半ば強引に体の向きをクルリと180度変えられる。
そうすればぼやけた視界の中に、必死の表情をした木嶋さんが映りこんだ。
そして私の顔を見るやいなや、私を強引に抱きしめた。
「どうしたんですか!何があったんですか!」
そう耳元で発せられる声は、あまりにも余裕がなさそうだった。
「なんで…また泣いてるんですか……っ」
言葉を発する度に、木嶋さんの腕の力は強くなる。
「ごめんなさい。俺が守るって言ったばかりなのに。もっと早くに明里さんの所へ行けばよかった」
守るだなんて大袈裟だよ、と笑って見せようと思ったけれど、今はどうしても笑えるような余裕がなかった。
「雪だった」
「……え?」
「陸と浮気してたの雪だった。さっき、キスしてたところ見ちゃったの」
そう言って笑おうと必死に口角をあげようとするけれど、案の定、上手くは笑えなかった。
それどころか、涙が溢れてきて前を向いていられなくなった。