浮気 × 浮気
「俺たち浮気してるのに、浮気らしいこと……まだ1度もしてませんね」
そう言葉を紡ぐ木嶋さんの声にはなんだか熱がこもっているように感じられる。
「明里さん」
再びそう耳元で名前を呼ばれ、私は思わず振り向いた。
するとその瞬間。
「…………っん」
振り向きざまに、唇に柔らかい感触が落ちた。
一瞬、何が起こったのか分からなくなって、頭が真っ白になる。
けれど、状況を把握するのにそう時間はかからなかった。
顔の距離、それはもう1センチもない。
あまりの至近距離で、木嶋さんの熱い瞳に捉えられ、私は動くことができなかった。
心臓がうるさいくらいにドキドキと大きくなっている。
…………ありえない、木嶋さんとキスなんて、ありえない。
そう思うはずなのに、胸はドキドキと加速していくばかり。