浮気 × 浮気


軽いパニックに陥り、上手く息が吸えない。胸が苦しくて苦しくてたまらない。

唯一信じられる人に…信じていた人に、裏切られた苦しみと悲しみ。そして……大きな虚無感。

私は思い立ったようにその場に立ち上がると、目の前が涙でよく見えないまま、二人をおしのけて外へと飛び出した。


後ろから木嶋さんの私を呼び止める声が聞こえてくる。

けれど私は止まらなかった。止まりたくなかった。

あんなに優しくしてくれたのも、好きだと言ってくれたのも、抱きしめてくれたのも。

全部、全部嘘だった。
すべて雪の策略で、私は雪の掌の上で転がされていただけだったんだ。


「……っ」


涙で濡れた頬が、走るたび風が頬を切るようにして吹く。涙は止めどなく溢れ、視界を遮る。


ーーーだから、私は気が付かなった。

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