浮気 × 浮気

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明里さんの顔を見たいと思い、待合室で待つこと数時間。

その間も雪の姿は見えなかったことから、帰ったのだと推測した。

俺には雪を引き止める権利はない。
……もちろん、怒る権利だって。

雪の作戦に加担した俺も間違いなく有罪だ。明里さんが目を覚ましてくれた後、どんな顔で何を話せばいいか分からない。
……だけど、それでも、明里さんに会いたい。


そう思い、溢れてくる感情に唇を噛み締めた時、目の前の自動ドアが開き、明里さんの彼氏…秋本陸さんと、明里さんのご両親であろう老夫婦が顔面蒼白で走ってみえた。

しかし俺の事には目もくれず、受付の方へと急ぐ。

一瞬秋本さんとは目が合ったが、それもすぐに逸らされた。

そして俺と同じように待合室では待つように促されたんだろう。彼らも俺から少し離れた場所に腰を下ろしていた。


徐に携帯を取り出し、時間を確認しようとしたそんな時。

不意に横から肩を叩かれ、そちらに視線をやれば、秋本さんの姿があった。


「ついてこい」


その声は酷く冷たく、怒っているのだと一瞬で理解出来た。


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