浮気 × 浮気
赤の他人だし、相手からしたらきっとただの笑い話だ。
だから淡々と話し終えて、「別になんとも思ってない、最低な彼氏でした〜」って、笑い飛ばしてやるつもりだった。
それなのに、何度も何度も喉が詰まって、声が震えた。
懲りずに溢れ出てくる涙のせいで、途中からわけも分からないまま話し続けて数分。
やっとの思いで全て話し終えた。
だけど、それから数十秒。
何も言葉はなかった。
しんとした冷たい空気が、私の情けなさを煽り立てる。
当たり前だ、赤の他人なんだから。
どうでもいいと思ったに違いない。
ただただ気まずい雰囲気に胸が苦しい。
この空気をなんとかしないと。
そう思った私は、何か話そうと口を開きかけた。
ーーーが、その時。
急に手を握られたかと思えば、グイッと手前に引かれる。
そして気づけば、暁さんの腕の中にいた。
「え、ちょ…っ」
反射的に暁さんから離れようとしたけど、私を抱きしめる腕があまりにも優しくて、なぜだか安心してしまっている自分がいた。
「辛かったね、」
そう言って抱きしめていた手を頭に移動させ、私の頭を優しく撫でた。
「どうして、そこまで優しいの、」
すっと出た疑問に暁さんは軽く笑った後、「なんでだろうね」なんてはぐらかした。