浮気 × 浮気
秋本 陸side
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《秋本 陸side》
パソコンと向き合って一所懸命仕事をしている明里を見て、俺はふぅと息を漏らした。
頭の痛みはないようだし、今のところは一安心だな…なんて思いながらも、全ての不安は拭いきれないままだが。
隣の社員と話し、笑っている明里を見ながら、俺はふと、明里が目を覚ました日の事を思い出していた。
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明里の病室で見舞いに持ってきたフルーツを切っていた時、明里がか細い声で呟くようにして俺に言葉を放った。
「ほんと、たくさん迷惑かけてごめんね」
俺は持っていたナイフとフルーツを手から離すと、ゆっくりと明里の方へ体を向けた。
「全然迷惑じゃない。俺の方がごめん」
俺がそういうと、明里は不思議そうに顔を傾げた。
「なにがごめんなの?」
「なにがって…」
言い難いことに口を噤む。
あの日の事について、まだちゃんと誤解を解けていなかったから。嘘をついてしまったから。山下雪とキスをしてしまったから。
今ここで…目を覚ました直後に言うべきか?言わないべきか?
俺は心の中で葛藤した。