浮気 × 浮気


それからも俺は明里がどこまで覚えていないか、どこからは覚えているのかを探るべく、話を続けた。

そうしていれば、だいたい分かった事がある。

明里は、事故に遭った事は自体は覚えているものの、あの日…6年目の記念日から事故に遭った直前までの記憶がない。……まるで、そこの部分だけが抜け落ちているかのように。


医者にそんな明里の状態を相談してみたところ、渋い顔で告げられた。


「それらの出来事が相当辛かったんでしょう。もしかすると、ストレスによる解離性健忘が事故を引き金に発症してしまったのかもしれませんね…」


と。

俺はその医者の言葉に、ただそうですかと頷くことしか出来なかった。

なんとも言えない気持ちのまま、再び明里のもとへ戻ると、にこやかな笑顔で迎えてくれた。

あの日以来、一切俺に向けてくれることのなかった懐かしい優しく明るい笑顔だった。

< 153 / 236 >

この作品をシェア

pagetop