浮気 × 浮気


「大丈夫ですか」


私の足元にしゃがみこみ、そう言いながら私に手を差し伸べる謎の男性。

私は未だ震え続ける手でその手を恐る恐る掴むと、グイッと男性の方へ引かれた反動で上半身が自然に起き上がった。


そうすれば先程まではよく見えなかった男性の姿が目にしっかりと映り込む。

私の体に怪我がないか確認してくれているのか目は合わないけれど、端正な顔立ちをしているという事は一目で分かった。


「もう日も暮れてるんですから、女性一人で歩くのはあぶな」


そこまで言いかけた男性とバッチリ視線が絡み合う。……と同時に、何故か言葉を失う男性。

途端、その男性の頬に一筋の涙が伝った。


「え、ちょ…どうしたんですか?」


焦ったようにそう声を掛ければ、彼は急に私の手を強く握った。


「……あかり、さん…っ」

「どうして…」


教えてもいない私の名前をとても切なそうに、辛そうに紡ぐ彼に私は表情を曇らせる。


「ごめんなさい…俺、本当は」

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