浮気 × 浮気
そう言って言葉を続けようとする男性に私は咄嗟に声をかぶせた。
「ま、まって!待ってください!あの、人違いじゃないですか?確かに私は明里ですけど…私は貴方を知らないので…」
私がそう言葉を投げかけた直後、彼の表情が分かりやすく困惑したのが分かった。
そしてその直後、握られていた手がパッと開放される。
シンとした居心地の悪い空気が数秒流れ、私は思わず口を開いた。
「助けて頂いて本当に本当にありがとうございました!……ただ、その、貴方の思ってる明里さんと私は多分違う人かと…」
そう言って男性の顔を確認すれば、妙に納得したような…諦めたような…そんな表情をしていた。
しかしその表情がまるで嘘だったかのように、次の瞬間その男性はニコリと爽やかな笑顔を浮かべ、目尻に溜まっていた涙を拭った。
「ごめんなさい、確かにそうでした。泣きたいのは、あなたの方なのに俺が泣いちゃって変な感じですね」
と微笑む。
私はそんな彼に返すように軽く微笑み、そっと口を開いた。