浮気 × 浮気
「このお礼は必ずさせて下さい!なので…お名前と連絡先を教えてくださいませんか?」
私はゴソゴソと鞄から携帯を取り出すと、そう彼に伺った。
「いや、そんなのいいですから。俺がたまたま通りかかっただけです」
なんて言って、一向に何も教えてくれそうにない。
私はそんな彼の両肩にポンと手を置き、再び口を開いた。
「いえ!必ずさせてください。お願いです!絶対に!」
そう圧をかけると、男性は一旦下へと目線をやった後、ため息を漏らした。そうして、何だか気まずそうに口を開く。
「……暁です、木嶋暁。連絡先は××ー×××ー×××です。……じゃぁ、俺はこれで」
なんてまるで独り言のように小さく呟いた木嶋さんは私の言葉を待つことなく、この場を颯爽と去って行った。