浮気 × 浮気
「アイツとは、もう…会わないでくれ」
耳元で囁かれたその声は、とても必死だった。息が詰まってしまいそうなほど、必死な声色だった。
なぜ会っては行けないのか?
なぜそんなに必死になるのか?
聞きたいことはたくさんあった。
……けれど、震える体でそう私に訴えてくる陸にそれ以上何も聞けなかった。
エレベーターが1階につき、何事も無かったかのようにビルを出た私達は、再び顔を見合せた。
「今日は…本当にごめん。散々だっただろ」
そう言葉を発した陸の表情はとてつもなく悲しそうで。
「何言ってるの。少しでも長く陸といられたことが私は嬉しかったから」
そう言って慰めるように笑いかければ、陸も私にぎこちない笑顔を返した。