浮気 × 浮気
「あ…えっと、」
横目でチラリと前澤さんに助けを求めるけれど、彼女の視線は私にはなく社長にあって、私のヘルプには毛頭気づかない。
ただ座ってるだけでいいって言ったのに〜!
なんて心の中で叫びながら、社長の無言の圧に耐え忍ぶ。
何か言わなくちゃいけない……だけど、営業部の事を詳しく知らない私が容易く意見していいのだろうか。
正直なところ、「総務から代理で参りました」とは今更もう言い難い。挨拶の時点で言っておけば良かったと心底後悔する。
段々と重苦しい雰囲気になり始めて、額に汗が滲む。
何か……何か……そう思い当たり障りの無い言葉を述べようと「私もそれでいいと思います」と告げれば、社長の眉間に皺が寄ったのが分かった。
「君には意見がないのか?普通は意見を持ってくるべきでは無いか?」
「……は、はい、申し訳ございません!」
しまった言葉を間違えた、なんて思ってももうそれは後の祭りで。