浮気 × 浮気
重苦しい雰囲気が漂う車内で、私は徐に口を開いた。
「私のせいで…本当に、申し訳ございませんでした」
その言葉のあと、数秒の沈黙があってから、前澤さんは言葉を放った。
「いえ。私の責任ですから気にしないでくださいね。また後日、違う人と来てしっかり契約貰ってきますから」
「……はい」
“違う人と来てしっかり契約貰ってきますから”その言葉に、前澤さんの怒りの全てが篭っているように感じられた。
そんな会話からひたすら沈黙が続くこと1時間ちょっと、昼休憩前に会社へ到着した。
課長に結果を聞かれた前澤さんが呆れた表情で首を振っているのが見えて、胸がきゅっとなった。
私のせいで、途中まで上手くいっていた契約を台無しにしてしまった。本当に最悪だ…初めからちゃんと無理だと断ればよかった。
申し訳なさでいっぱいで、課長の顔をまともに見ることも出来ないまま私は深く頭を下げた。
そして、私は重い足取りで総務のオフィスルームへと戻った。
昼休憩がくるまで、再び自分のパソコンと向き合って仕事を進める。だけど脳裏にこびりついたさっきの失態が私を追い詰めて、自分の仕事もままならず、ミスを連発。
自分の仕事の出来の悪さと惨めさから、どっと感情が押し寄せてきて視界が滲んだ。
昼休み開始後すぐ、私は必死に涙を堪えたままトイレへと駆け込んだ。
その瞬間、糸がプツンと切れたかのようにとめどなく涙が溢れてくる。それを手の甲で何度も何度も拭いながら、私はポケットに入れた携帯を取り出した。
そして滲む視界の中、陸の名前を探して『今会いたい。』とトークルームへ打ち込む。