浮気 × 浮気
「はぁ」
今日はとことんダメな日だ…なんて思い、思わずそんな大きなため息が漏れる。
こんな時陸がいてくれたら…なんて思うけど、仕事で忙しい陸に助けを求める訳にはいかない。
そんなことを考えている間にも次第に強くなってくる雨足に、私はどこかで雨宿りをしようと足を大きく一歩踏み出した…その瞬間。
下に大きな石が落ちていたことに気づかなかった私は、しっかりとその石に躓き、気づいた頃には全身水浸し。
「さいっ、あく…」
直ぐに立ち上がろうとするけれど、足をくじいてしまったのか、足に上手く力がはいらない。
そんな私の横を、憐れなものを見るような目で人々は通り過ぎて行く。
不意にフラッシュバックする今朝の営業。せっかくの期待を裏切ってしまったことへの不甲斐なさ、社長に意見を言えなかった私の不出来さ、前澤さんに呆れられてしまった惨めさ。
……そして何より、私のせいで取れるはずだった契約が取れなかったことへの申し訳なさ。
「…………っ、」
私は込み上げてくる感情にどうしても蓋することが出来なかった。
私はその場に座り込んだまま、惨めにボロボロと声を殺して泣いた。
きっと、私の横を通る人達はドン引きだろう。不審に思うだろう。
だけど今の私にとってはそんなことも気にかけられないくらい、心に余裕がなかった。
頬を伝う冷たい雫は、雨なのか、涙なのか。
そんなのも分からないくらいボロボロと溢れ出てくる。
雨でよかった、なんて今更ながら思った。