浮気 × 浮気
こんなずぶ濡れじゃ陸に心配させてしまう。
このままじゃ会えるわけがない。
そう思った私は陸にもう帰るね、と連絡するべく携帯を鞄から取り出そうとした。
…………その次の瞬間。
私に容赦なく降り注いでいた大粒の雨が、急に私だけを避けたのだ。……そして、ふわっと香った優しくて甘いジャスミンの匂い。
その香りはなぜかとても懐かしく感じられて、思わず縋ってしまいたくなる。
「大丈夫ですか」
頭上から降ってきたのは、聞き覚えのある低くて、それでいて柔らかい声。
私はその声に返すかのように、俯かせていた顔をゆっくりと上を向けた。
すると、そこにいたのは……
「…き、しま…さん?」
「何やってるんですか…こんな所で」
呆れたような…だけど、その表情はとても暖かくて優しい。