浮気 × 浮気

驚いた私は黙ったままつい呆然として木嶋さんを見つめていると、唐突に頬に温もりを感じた。

そして掌でそっと頬の雫を拭ってくれる。

私を見つめる目はとても優しくて、どこか切なさも感じる。


「どうして……」


そう思わず声を漏らした瞬間、体が宙に浮き上がった。


「ちょ、木嶋さん…!?」


状況を把握するのに少し時間がかかったけれど、これは俗に言う…お姫様抱っことかいうやつでは……?!


羞恥心に駆られ、慌てて降ろしてと暴れるけれど、木嶋さんは決して離そうとはしない。


「危ないからじっとしてて貰えますか」


至って真面目な声色に、私は動きを止めて諦めた。


ふと頭上を確認すれば、水色の綺麗な傘が私を覆っていた。

だけどその傘は小さくて、木嶋さんの体はほぼ雨に晒されている。既に木嶋さんの肩はびしょ濡れ。


「…木嶋さんが風邪ひいちゃいますから、」

「俺が引いても誰も困らないんで」

「それ言ったら私だって!」

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