浮気 × 浮気
それにハッとした私は「ごめんなさい!」と言いながら、咄嗟に腕を引こうとした。
けれど……木嶋さんは手の力を緩めようとはせず、ただ真っ直ぐに私を見つめる。
木嶋さんの視線に動けない。
そんな私に木嶋さんが言葉を発しようと口を小さく開けた矢先、優愛さんがタオルを手に走って戻ってきた。
「お待たせー持ってきた」
そんな言葉と同時に呆気なく開放される腕。
そして、タオルを受け取った木嶋さんは、何事も無かったかのようにして私にタオルを手渡した。
「とりあえずこれで体拭いてください。タクシー呼んどくので、あとはそれで」
そう言って私に背を向けた木嶋さんを咄嗟に呼び止めようと席をたった瞬間、私は足首を捻っていたことを思い出した。
「いっ、」
あまりの激痛に思わずそう声を漏らすと、木嶋さんは慌ててこちらに振り返った。