浮気 × 浮気

そして焦って私に駆け寄ると、手で抑えていた足首に視線を向ける。


「……もしかして挫いたんですか?」


心配そうに呟かれたその声に、こくりと頷いた。


「もっと早くに言ってくださいよ。とりあえず手当するので、ここで待ってて下さい」


そう言って再び私に背を向けようとする木嶋さんの服を咄嗟に掴んだ。


驚いた表情を浮かべた木嶋さんが私の方へ顔を向ける。


「今は、ちょっとそばにいてもらいたいなぁ……なんて」


目を見て言うのは恥ずかしくて、つい視線を逸らしてしまった。

自分でも意味が分からないことだとは思ってる。


まだ会って間もないのに。お互いの素性も知らないのに。

それなのに、なんでこんなに甘えたくなるんだろうか。そばに居て欲しいと思ってしまうんだろうか。


それともこれが、この人の魅力なのだろうか?


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