浮気 × 浮気
近しくなってはいけない。
恋しくなってはいけない。
明里さんに近づいてはいけない。
その言葉が何周も俺の頭の中で巡回する。
「すみません、」
だけど、もう……今日だけは。
今日でもう必ず終わりにするから。
「え…?」
俺の声に反応した明里さんがおもむろに顔を上げ、俺と視線が絡み合う。
溢れる明里さんへの感情がどうしても抑えきれず、俺は明里さんの華奢な肩を抱き寄せた。
「き、木嶋さん……?」
か細い声が鼓膜を揺する。
「嬉しかったって……辛い時は人の温もりが1番効くんだよって、俺の大切な人から言われたんです」
「大切なひと…?」
「はい、だからこうさせて下さい」
そう言ってぎゅっと強く抱きしめる。
あの時、明里さんしてくれたように。