浮気 × 浮気
待ち時間
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居酒屋から、もう既に暗くなったビルの外へと出た私と優愛さんは、タクシーが来るまで近くにあったベンチで腰掛けて待つ事にした。
「もう戻って下さい」と言ったけれど、「それは暁から怒られるから」と呆れ顔で言われ、一緒に待ってもらうことになった。
さっきの木嶋さんの言葉がどうしても気がかりだけれど、今はそんな疑問をどうすることも出来ず、私は小さくため息をついた。
ふと隣に座る優愛さんを見れば、私のせいでどこか疲れているように見えた。
「あの、ここまで肩貸してもらっちゃって、本当にすみません。」
緊張しながらもしっかり優愛さんの顔の方へ体を向け、そう謝ると「別に」と素っ気なく返されてしまう。
もしかして怒ってる…?
あんまり話しかけられたくないのかな…。
とても気まずい空気が流れて、私はつい口をきゅっと結んだ。
けれど次の瞬間、優愛さんが不意に私に話しかけてきた。
「あんた、本当になんもないんだね」
「………え?」
言葉の意味がわからなくて、つい間抜けな声を漏らすと、「何でもない」とため息混じりに軽く返された。