浮気 × 浮気
「私、暁には幸せになってもらいたい。大学からの知り合いだけど、最近の暁のことは私が1番よく知ってるつもり」
優愛さんはそう言い放ったあと、徐に私の方へ顔を向ける。
「許してあげてよ、暁のこと。暁は誰よりも真っ直ぐで良い奴だよ」
暖かくて、そしてどこか切ない優愛さんの視線に私は言葉を詰まらせた。
なんて言えばいいのかわからなかったし、何より意味がわからなかったから。
モヤモヤとした霧のようなものが心を覆う。最近、辻褄の合わないことばかりだ。
ピキッといつもの頭痛が頭を走って思わず顔を歪めた時、タクシーが目の前で止まった。
「タクシー来たね。じゃあ、また」
優愛さんは素っ気なくそう呟くと、ビルの中に駆け足で消えていった。
私は捻った足を庇いながらゆっくりとタクシーへ乗車し、行き先を伝えた。
ゆっくりと動き始めたタクシーに揺られ、私は思考を巡らせる。
私はもしかして、何か大事なことを忘れている……?それだったらなんで陸は私に何も教えてくれないの…?
そこでふと陸との約束を思い出し、慌てて携帯を取り出せば、『ごめん、今日は会えない』と1文だけメッセージが来ていた。
それに少し安心しながら返信すると、私は携帯をしまった。
陸は、私になにか隠しているのだろうか。
色んな不安が脳裏を過ぎる中、私は窓からネオン街を見つめた。
.
.
.