浮気 × 浮気
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目を覚ませば、なんだか馴染みのある天井が目に入ってきた。

徐々に意識が鮮明になって行く中で、ピ…ピ…という独特な機械音が聞こえてきて、ここが病院なんだということ理解し始める。


そんな時、ふと手に温もりを感じて、私はそちらの方へ視線をやった。

そうすればそこにいたのは、私の手を握りながらウトウトとする陸の姿だった。


私は思わず陸の名前を口にすると、陸はハッとしたように目を覚ました。


「……明里、ごめん、」


キョロキョロと動く視線に、陸の居心地の悪さを感じる。


「仕事なのに、ごめんね」


ふと目に入った時計を見た私は、また昼過ぎだと言うことに気づき、陸が仕事を休んでくれているのだと分かったのだ。


「当たり前だろ、俺のせいで倒れたんだから」


逸らされたままの視線で、陸はそう静かに呟いた。


「……思い出したよ、全部」


私の手を握っていた陸の手が一瞬だけ大きく震えたのがわかった。

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