浮気 × 浮気
「ごめんな、山下」
「……はっ、?」
「分かってやれなくて、気づいてやれなくて、本当に…申し訳なかった」
おでこが机に今にも付きそうな位置まで秋本くんは頭を下げながら、そう言葉を発した。
当の私は何をいえばいいかも全く分からず、ただそんな秋本くんを呆然と見ているだけ。
謝られても困る、どう考えても全て私のせいなのだから。
秋本くんが明里と別れたのも、明里が事故に遭ったのも、きっと全部私のせいなのだから。
私は膝の上に置いていた拳をギュッと強く握りしめた。
「…秋本くんが謝ることないでしょ。そうやって、偽善者ぶって何がしたい訳?」
震える唇で私はそう言葉を紡いだ。
可愛くない、最低な言い方だ。
いつから私は、こんな風にひねくれてしまったんだろう。
ポトリ、と机に小さな水溜まりが出来る。ひとつ、またひとつとその水溜まりは増えていく。
周りがやけに歪んで見えて、気づけば頬は生温い液体でベトベトに濡れていた。