浮気 × 浮気
膝に手を付いて、荒くなった息を整える。
ふと、その時目に浮かんだのは、事故前の雪と木嶋さんの会話。
正直、聞かされたその内容はすごくショックなもので、怒りを通り越してとても苦しかった。
騙されたことへの痛みと、切なさ。裏切られた虚無感。木嶋さんの本物の優しさを知っていたのに、私は木嶋さんの話を聞かず、アパートを飛び出してしまった。
自分でもあそこまで取り乱してしまうとは、今思うととても恥ずかしい。
……だけど今思えばそれは、木嶋さんの事を本気で好きになってしまっていたからだったんだと気づく。
伝えなきゃいけない、伝えたい。
整い始めた呼吸に私は再び上半身を起こし、前を見据えた。そして走り出そうと1歩を踏み出した矢先……
________♪ ♪
鞄から着信音が聞こえ、私は慌てて携帯を取り出した。
そして画面を確認してみると、それは雪からの着信だと分かった。