浮気 × 浮気
「事故の日、覚えてる」
淡々と放たれたその言葉にはきっと、疑問符が付けられていたのだろう。
私はその言葉に、小さく首を縦に振った。
「もう知ってると思うけど、木嶋…暁は私の幼馴染なの。」
「……」
「明里を陥れるように、私が全部指示したの」
机に落とされていた視線が、おもむろに私を捉えた。
「暁さ、私を睨んで言ったの。明里のことが本気で好きだって。」
そう言って、自嘲するかのように笑った雪は私の言葉を待たずして再び口を開く。
「良かったね、みーんなから愛されて」
なんだか苦しそうに吐き捨てられたその言葉に、私は唇を強く結んだ。
「……私は、あんたをどうしたら傷つけられるか、それだけを考えて5年間ずっと働いてきたの。あんたをただ陥れる為だけに」
雪が口にする言葉は全て刺がある。だけど、まるでそれはただの強がりにも感じられて。