浮気 × 浮気
「どうして…ここに、」
「…さっき、この小屋を通りかかった知り合いが、ここの小屋に幽霊がいたとかなんとかで顔面蒼白で宿に帰ってきて…。もしかしたら人が閉じ込められてるんじゃないかって思って見に来たんです」
「そっ、か…」
あの行動は無駄じゃなかったんだと、私は少し頬を緩めた。
けれど木嶋さんは依然と深刻そうな表情をしたまま私を見つめ、徐に私の額へ手を当てた。
「やっぱり熱が…」
「…へ?」
なんだかポーっとする頭で、そんなことを呟いた木嶋さんをぼんやりと見つめる。
額に当てられたゴツゴツとした大きな手は、徐々に下へと下ろされ、今度は私の頬を優しく覆った。
「本当に…放っておけない人ですね…」
私を見る目は心底優しくて、暖かい。
「とりあえず今は雷雨で外は危険なので朝までここで待機してましょう」
そう言うと木嶋さんは来ていた上着をそっと私に被せてくれた。
「これで少しは暖かくなりましたか?」
私の顔を下から覗き込むようにしてそう問いかけてきた木嶋さんに私は小さく首を横に振った。
「あ、まだ寒いですか!?」
そんな私に焦った木嶋さんが困った表情をしながら、周りに何かないかとキョロキョロし始める。
私はそんな木嶋さんの頬へと徐に手を伸ばすと、そっと優しく触れた。