浮気 × 浮気
「うん、そうだろう〜!じゃあ大園!頼んだよ」
「……はい」
課長の能天気さにため息が漏れそうになりながら静かにそう返事をしたあと、2人で課長の後ろ姿を見送った。
何だか冷たい雰囲気を放つ雪に、なんて声を掛ければいいのか分からず、ただ視線を送れば、意外にも目が合った。
…………だけどそれは、見たこともないくらい冷たい目で。
「ほんと…明里は私なんかと比べて人望があるねぇ。もう、笑っちゃう」
独り言のように呟かれたその言葉は、紛れもなく雪の本音だと感じた。
「違うよ!私はただ上手いように使われてるだけでデキるデキないとかじゃ」
「まぁいいの。明里は本当にすごいもんね!」
そう言葉を紡ぐと、雪はいつものような明るい笑顔を浮かべた。
「何か大変なことがあったら言ってね?私暇だし、手伝うから〜!」
「あ、ありがと…」
私の言葉に笑顔を崩さず軽く頷いた雪は、トイレに行くからとオフィスルームとは別の方向へ歩いて行った。