浮気 × 浮気
だけど、恐れていた痛みも倒れた時の大きな音も、一向に私を襲わない。
そればかりか、背中と肩に暖かな温もりを感じる。
おかしいと思い、薄らと目を開けて後ろを確認すれば……
「明里さん、また出会っちゃいましたね〜」
なんて笑う木嶋さんが私の視界いっぱいに写った。
だけど私の顔を見た瞬間、木嶋さんは表情を曇らせた。
そしてその直後……
「いってぇ……すみません……なんか急にお腹痛くなってきちゃって……大園さん、トイレの場所教えて頂けませんか?」
とあからさまに大きな声で私に言い放ったのだ。
これは木嶋さんの顔を見りゃわかる。お腹痛いなんか嘘だって。
あまりにも唐突な言葉に立ち尽くしていると、あの時のように不意に手を握られた。