浮気 × 浮気
「とりあえず、この事を早く伝えておきたかったから」
心做しか嬉しそうな陸に複雑な気持ちになる。
だって陸はあの日…私じゃなくて、違う女と会うことを選んだ。それなのにどうして、私と同じ職場になる事に嬉しそうなの。
陸は私の事、もう好きじゃないんじゃないの…?
目の前でいつもより機嫌のいい陸が何だか恨めしい。
浮気していることを私が知らないと思い込んでいる陸が…私を騙せていると思っている陸が…恨めしくて仕方がない。
徐々にせり上がってくる怒りに唇を噛み締める。
……だけどこの期に及んでもまだ、陸に限って浮気なんかするはずないと思っている自分もいる。信じたいと思う自分がいるのだ。
聞くのは怖い、真実を知るのは怖い、……だけどこのまま有耶無耶にして置いていい事じゃない。
私は震える手をぎゅっと握りしめた。