浮気 × 浮気
そして陸の顔をしっかりととらえた後、私はゆっくりと口を開いた。
「記念日…本当は寂しかったんだよ」
その言葉の直後、陸の表情が曇ったのがわかった。
「あの日、本当に仕事だった?」
こんな質問をする日が来るなんて、思ってもみなかった。
体全体がドキドキと脈打ち、じんわりと涙が目に浮かぶ。
「……何が言いたい?」
陸はいつものように感情のない顔で私にそう問いかけた。
「答えて、本当に仕事だったの?」
その言葉の直後、シンとした空気が私たちを囲んだ。時計の秒針の音がやけに大きく聞こえてくる。
だけどその静寂は、陸によって破られた。
「…当たり前だろ、嘘をつく必要ない」
斜めに逸らされる視線と、ぎこちない間。
その瞬間、あぁそうか…やっぱりそうだったのか…と思った。
6年間は長かった。私はこの6年間を伊達に送ってきた訳じゃない。
だから分かってしまう。陸が嘘をついていることを、……あの日、他の女と寝たと言うことを。