浮気 × 浮気
その瞬間、陸の腕が緩んだのと同時に、二の腕を後ろに引かれ、ジャスミンの匂いがする平べったい何かに背中から抱きしめられた。
この匂いは……紛れもなく木嶋さんの甘い香りだ。
陸の唖然とした表情が目に映る。
私は咄嗟に木嶋さんから離れようとするけれど、がっちりと胸前で重ねられた腕は私を離そうとはしなかった。
「りっ陸…!これはその、違……っ」
変に弁解しようとしている自分に気づいて、途中で口をつぐむ。どうしてまだ…陸に変な風に思われたくないって思う自分が居るんだろう。
「…あんた、だれ?」
いつになく低い声が陸から発せられ、驚く。こんなに、怒りを露わにしている陸は初めてだった。
「初めまして〜俺、明里さんに教育係をつとめて貰ってる木嶋暁です」
声色だけでもわかる…木嶋さんは陸を挑発している。