浮気 × 浮気
もしかして、早く終わったのかな?
そんな淡い期待を持ちながら、通話開始ボタンを急いで押し、すぐに声を発した。
「もしもし陸?!もうおわった…の………え」
一瞬、わけがわからなくて、体が硬直した。
私は自分の耳を疑った。
頭の中が真っ白になりながらも、何度も自分の耳を疑った。
「なん……なの……?」
だけど耳に入ってくるのは、……何度も何度も聞こえてくるのは、間違いなく男女の吐息。
時折混じって聞こえる女の喘ぎ声に、背筋が凍りつく。
私は反射的に耳に当てていた携帯をソファを投げつけた。
何も考えられない頭と、震える体。
まるで体そのものが脈打っているかのような感覚。
もしかしたら聞き間違えかもしれない、ただの空耳かもしれない、なんて思いながら、恐る恐るもう一度携帯を手に取るけれど…
……そんな期待はただの現実逃避だったということに改めて気付かされ、私は静かに通話を切った。
シンと静まり返った部屋に、妙に冷静になってしまう。
けれどその矢先、頬を冷たい液体が伝ったのを感じた。
「……っ、」
どうしようもない思いが急に押し寄せてきて、胸が苦しい。
助けを求めるかのように、無我夢中で雪に電話をかけてみるけれど、いっこうに出てくれる気配がない。
「………なんで…っ、」
息がしづらくなって、前が見えなくなる。
このままこの家にいたら気が狂ってしまいそうで、私は咄嗟に部屋を飛び出した。
ただ、逃げたくて、消えてしまいたくて、靴も履かずに外へと飛び出した。____。