浮気 × 浮気
「今から明里さんと夜ご飯行くんですよ、だから…邪魔しないで貰えます?」
そう言った後、木嶋さんは私の顔を覗き込むようにして、「ね?」と悪戯っぽく微笑んだ。
私はそんな木嶋さんにただ小さく頷くことしか出来ず、陸の顔は見れなかった。
そんな私を見てか、不意に手を優しく握った木嶋さんは、その後、私を陸から離すようにして急に歩き始めた。
けれども陸はそれを許さなかった。私の片方の腕を掴んだ。
いつになく慌てている、そんな様子が手に込められた力から伝わってきた。
………だけどもう、陸に優しくする義理はない。そばに居る義理なんかない。
私は陸を一瞥したあと、腕を掴む手を思い切り振りほどいた。
「仕事、お疲れ様」
私は一言残すと、陸を置いて木嶋さんとその場を去った。
木嶋さんに引かれるのでなく、私から木嶋さんの手を引いて。
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