浮気 × 浮気
しかしその直後、彼女は「あ」と小さく声を上げた。
「もしかして…明里の、彼氏さん…ですか?」
「……え?」
間違ってたらごめんなさい、とその言葉に付け足す彼女。
「いや…間違いじゃないですけど、」
つい立ち止まってそう返せば、その女性はパッと表情を明るくした。
「やっぱり!そうだと思いました〜!そのブサカワなキーホルダー、明里とお揃いだな〜って思って」
「あぁ、そうなんですか」
ブサカワではないだろ、と内心思いながらも、明里と仲が良い人なのかもしれないと思って一応愛想良く笑顔を作っておく。
「はい。てか私、明里と同期で仲良いんですよ〜?」
あぁ、やっぱりそうだったのか、と自分の勘の良さに改めて気づく。
仲がいいんなら、明里に直接俺が待っている事を伝えてもらおうかと思ったが、わざわざこんな私情を頼む訳には行かないと思い、やめておいた。
ふと自分の腕時計を確かめると、休憩時間終了までに迫っていて、俺は「そろそろ失礼します」と目の前で意味ありげにニコニコと笑う彼女に声を発する。