浮気 × 浮気
不思議な人
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もうどれくらい走ったのだろう。
怪訝そうに私を見る人達の波を超えて走り続けているうちに、私は気づけば全く知らない場所に来ていた。
4月に入ってばかりの風は、まだ冬の名残があって冷たい。そればかりか、日が落ちるのも早くて、あたりは真っ暗だ。
携帯もお金も、靴も上着も、なにもかも家に置きっぱなしな人間なんて、私くらいだろう。
「何やってんだろ、わたし」
まるで自分を嘲笑うかのようにそう呟いた時、不意に派手なライトが点滅しているお店が目に入った。
恐らく若者が集まって騒ぐバー的なものだろう。
正直、私はそういう所が怖くて苦手で、今まで1度も訪れたことは無い。
だけど、今はなぜだか、怖くなくて。
その店吸い寄せられるかのように、気づけば私はそこに足を踏み入れていた。
耳をつんざくような音楽に、騒ぎ立てるような大きな声、腰を振って踊る女とそれを見て笑う男、人の目も気にせずキスをするカップル。
色々な人が目に飛び込んできて、ある意味新鮮に感じられた。