浮気 × 浮気
「雪、木島さんと知り合いだったの?」
「えっ?いや、…別にそういうわけじゃないけど…」
そう言って雪は話を濁した。その姿から、これ以上は何も聞かないでと言われているようで、私はモヤモヤとしながらも口を閉じた。
シンとした何だか気まずい空気が私たちの間を漂う。
しかしそんな空気を破ったのは、雪の明るい声だった。
「木嶋くんの噂をたまたま耳にしただけで、特に知り合いとかではないよ?ほら、木嶋くんって結構整った顔してるからさ、噂になってるんだよね〜」
「へぇ……そうなんだ?」
「うん、そうそう」
何だか上手くはぐらかされたような気もしなくはないけど、雪の言っていることに説得力があるのは確か。
木嶋さんは端正な顔立ちをしているし、女性社員が噂をするのはおかしいことでは無い。
………だけど何となく、雪は何かを私を隠しているような…そんな気がしてならなかった。
そんな気持ちを抱えたまま、気づけばもう会社にたどり着いていた。
会社に着くと同時に雪はトイレに行くねと私に言い残して、ひとりで走っていった。
最近、…少し雪の様子が変だ。
私は内心そう思いながらも、雪の後ろ姿を見送ったのだった。
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