浮気 × 浮気


社長室から離れた人気のない場所に来た時、木嶋さんが突然立ち止まったかと思えば、急に明るく言葉を放った。


「明里さんに怒られてるとこ見られちゃいましたね〜」


そう言っていつも通り笑う木嶋さん。


「……大丈夫?」


なにから言えば良いのか分からず、つい当たり障りのない言葉をかければ、木嶋さんは私に向かってニコリと笑顔をうかべた。


「全然平気ですよ、怒られるのは誰よりも慣れてますから」


そう言って笑うけれど、それはやっぱり、どこか無理をしてるようで…強がっているようで…どこか痛々しく感じられる。


「木嶋さんじゃないでしょ、あのミス」


木島さんは何も言わない。


「なんで言わなかったの?違うって言えば社長から怒られることもなかったのに。」


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