浮気 × 浮気


部屋に着いても尚、手首は握られたままで、何をされるのだろうと恐怖でいっぱいになる。


やっぱり、こんなところ来なきゃ良かった。


そんな後悔と色々な思いが一気に押し寄せてきて、不意に涙が込み上がってくる。

堪えようとしたけれど、どうしても涙が溢れて止まらなくて、咄嗟に下を向いた時だった。


ふわりとジャスミンのいい香りが鼻を掠めたと思えば、頬に感じた柔らかな温もり。


それに驚いて反射的に顔を上げれば、そこには心配そうに私を見つめる端正な顔立ちがあった。


「泣かないで?大丈夫?足痛いの?靴…盗まれたの?」


そう問いかけながら、私の涙を優しく手で拭いたあと、すぐにハッとした表情を浮かべた。


「あ、もしかして俺のせい!?ごめん!そりゃそうだよな、ごめん!でも俺怪しい人じゃないから!」

「…」

「あそこ暗いし、もし足踏まれたら危ないから…だからここに連れてこさせてもらったんだけど…急にごめんほんとに」


そう言って本当に申し訳なさそうに頭を下げる彼。


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