浮気 × 浮気
あの日、クラブで明里さんの話を聞いた時、正直ゾッとしてしまった。それと同時にショックだった。もう、俺の知っている雪ではないとようやくそこで気がついた。
……そしてまた、クラブで明里さんと出会ったのも偶然ではない。
事前に雪から電話があって、明里さんの家を教えられた。そして〝明里さんを尾行しろ〟と詳しい事は聞かされないまま命令され、それに従った結果、たまたま俺が前に愛用していたクラブにたどり着いたという訳だ。
こんなこと、明里さんが知ったらどう思うだろう。深く傷つくのは確かだ。
でも、元はと言えば俺があんなクソみたいな提案にのったせいだ。全部、全部、……俺のせいなんだ。
俺はぎゅっと拳を握りしめた。
……こんな俺に、優しくして貰える権利なんかない。
込み上げてくる感情を抑えながら、俺はオフィスルームへと戻るべく足を進めた。
雪に怪しまれない程度に、明里さんとは距離を置こう。……それが明里さんをこれ以上傷つけないための唯一の方法だ。
《木嶋 暁side END》
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