。。折れた羽根、虹の架け橋。。③
「龍ーー」






「バカだな、ずっと知っててなんで言ってくれなかったんだよ。
俺はとっくに、終わった上で明日咲と共に生きていたのに」





そうだよーー母さん。

父さんは、かなり前から吹っ切れてた。

大切な人に、大切な人がいただけ。

恋とか、愛じゃなくても
父さんにとってあげはさんは、龍神の守る者だった。



「後悔してないの?
あげはさんを諦めたことー。」




父はその言葉に、さらに強く母さんを抱き締めた。



父の肩が震えてる。
顔は見えない。
父さんの背中だけしか、見えない。

見えたのは、今にも泣き出しそうな
母さんの初めて見る不安な顔だけ。






「諦めて良かったよ。
明日咲に出会えたーー。そして、大雅に出会えた」










父さんーー。







父さんの想いに、1つ。
母さんの目から涙が零れた。


視界が揺らぐ、俺の目からも1粒の涙。

父さんは怒ると怖いけど、
いつも優しかった。

今朝だってーー。
あれは、喧嘩なんかじゃない。



あれは、確かな"愛"だったーー。












泣き止んだ母さんが、ソファに座り息を整えた。




「今更不安になってごめんね。
龍、愛してるわ」








俺は知ってる。
想いが通じあってるカップルや夫婦でも
すれ違いで不安に想うことだってあるって。



「母さん、俺頑張るよ」




そしてーーまた1つ、大人になった気がした。









「あげはさんが、母さんに会いたいって」




伝えなきゃいけない言葉が、少しだけ遅くなったけど、落ち着きを取り戻した母さんに言うなら今が1番、いいタイミング。


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